終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
今日は午後から弊社で、鮫島も含めた九条さんとの打ち合わせ。

「では、進捗報告を宜しくお願いいたします」
「かしこまりました」

鮫島が深々とお辞儀する。
もう九条さんに怯むことなく、普通に接している。

(正直……羨ましい)

そんな風に思いながら、あたしも頭を下げていた。

「藤原さん、まだお時間ありますか」
「あ、はい。大丈夫です」
「少し二人だけで話したいことがあります」

それを聞いた鮫島が、「では」と資料を抱えて退室した。
あたしたちはもう一度、イスに掛けなおす。
九条さんが真っ直ぐに、あたしを捉えた。
  
「藤原さん」
「はい」
「まだ引きずっているんですか」
「……」

聞かなくても、何のことかわかっていた。
沈黙はしたものの、平常心の顔を保っている。 
 
「それは反省ではありません」
「え?」
「自己満足です」
「あなたが苦しめば失敗が消えるんですか?」
「そんなことは……」
「なら前を向きなさい」
「鮫島さんはもう前を向いています」

容赦のない正論が、ナイフのように刺さっていく。
そして、気にしている後輩のことも、遠慮なしに話題にあげたのだ。
答えられずにいると、九条さんは小さくため息をつく。 
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