終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
一度は、綾人の部屋の前で立ち止まる。
ドアノブに手をかけたものの、足が進まない。
「……無理」
そして自分のマンションに帰ってきた。
荷物を運び出したのが、遠い昔のように感じる。
電気もつけずに、そのままベッドへ倒れ込んだ。
「……私、何やってるんだろ」
スマホを取り出して、無意識にライブ映像を再生する。
ぼんやりと眺めていると、新着メッセージのウィンドウ。
『帰ってきた』
『ミルクティー淹れたぞ』
綾人からだ。
(あんなミスして、綾人の立場、悪くして……)
(会社にもホテルにも迷惑かけて……)
(綾人の足、引っ張ったのに……)
それなのに、彼はあたしにミルクティーを淹れて待ってくれてるのに。
『とっとと帰ってこい』
『お前、自分の評価低すぎ』
『寂しかったのか』
『気をつけて帰れよ』
いち様の歌声なのに、聞こえてくるのは綾人ばっかり。
「違う……今はいち様じゃない……」
あたしは起き上がって、お気に入りのアクスタを持つ。
「……なんで」
前までは辛いとき、いち様を見れば元気になれた。
一緒に歌って、踊れば、悩みなんて飛んでいった。
「なんで……綾人なのよ……」
ぽろりと涙が一粒、いち様のアクスタに落ちる。
「いち様なのに、いち様に見えない」
祭壇の写真立てを、そっと伏せる。
燻っていた罪悪感に押し潰されそうになる。
(綾人に幻滅されたら、どうしよう……)
「もぉ……やだ……」
ぽたり、とまた一滴だけ落ちる。
慌てて目元を拭う。
明日も仕事だ。
腫れた目では行けない。
あたしは、声を殺して静かに泣くしか出来なかった。
ドアノブに手をかけたものの、足が進まない。
「……無理」
そして自分のマンションに帰ってきた。
荷物を運び出したのが、遠い昔のように感じる。
電気もつけずに、そのままベッドへ倒れ込んだ。
「……私、何やってるんだろ」
スマホを取り出して、無意識にライブ映像を再生する。
ぼんやりと眺めていると、新着メッセージのウィンドウ。
『帰ってきた』
『ミルクティー淹れたぞ』
綾人からだ。
(あんなミスして、綾人の立場、悪くして……)
(会社にもホテルにも迷惑かけて……)
(綾人の足、引っ張ったのに……)
それなのに、彼はあたしにミルクティーを淹れて待ってくれてるのに。
『とっとと帰ってこい』
『お前、自分の評価低すぎ』
『寂しかったのか』
『気をつけて帰れよ』
いち様の歌声なのに、聞こえてくるのは綾人ばっかり。
「違う……今はいち様じゃない……」
あたしは起き上がって、お気に入りのアクスタを持つ。
「……なんで」
前までは辛いとき、いち様を見れば元気になれた。
一緒に歌って、踊れば、悩みなんて飛んでいった。
「なんで……綾人なのよ……」
ぽろりと涙が一粒、いち様のアクスタに落ちる。
「いち様なのに、いち様に見えない」
祭壇の写真立てを、そっと伏せる。
燻っていた罪悪感に押し潰されそうになる。
(綾人に幻滅されたら、どうしよう……)
「もぉ……やだ……」
ぽたり、とまた一滴だけ落ちる。
慌てて目元を拭う。
明日も仕事だ。
腫れた目では行けない。
あたしは、声を殺して静かに泣くしか出来なかった。