終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
第23話 渡瀬綾人の過去
——面倒なんだよな、全部。
容姿?
御曹司?
"俺"のことを知りもしない、知ろうともしない。
――俺が、"藤垣綾人"なら見向きもしねぇくせに。
それなら、期待しないほうが、いっそ楽だ。
物心ついた頃から、夫婦仲が冷めていたのは感じていた。
夜遅くに帰ってきて、すぐに出ていく父。
俺の前では明るくて、隠れて泣いていた母。
それでも老舗ホテルの社長夫婦という体裁が大事なようで。
パーティーで見る両親は、おしどり夫婦そのものだった。
『渡瀬社長の息子さんも、ご立派になられて』
『お二人の愛情の賜物ですね』
『綾人くんという立派な跡継ぎがいて羨ましいですなぁ』
俺にもおべっかや媚びを売る薄汚い大人たちに、正直嫌気がさしていた。
ただ、それでも二人に繋いでもらった両手はあたたかくて。
それが唯一の救いだった。
ただ、期待した結末にはならなかった。