終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
カードキーをかざして、玄関ドアを開ける。
志穂の靴はまだない。

(遅くなるって、連絡来てたな)

そのままリビングに行くと、テーブルの上に見慣れない紙が置かれていた。
どうやら置き手紙のようで、志穂が書いたものだ。
 
読み終えたあと、小さく舌打ちをする。
クローゼットを開けると、ご丁寧にドレスや服がきれいにまとめてあった。
ただ、妙な違和感が残る。
部屋を見渡したとき、その正体がわかった。
 
(なんで、アクスタやDVDやらを置いてんだ……)

あれはお前の大事な精神安定剤みたいなものじゃないのか。
そして、もう一つの違和感。
パーティーで揃えた一式の中にあったアンクレット。
それがこの中にはない。
いつもブレスレットとして、左手首に寄り添っていた。
 
いい加減、自覚しろ。
お前がどれだけ俺から離れられてねぇか。

空のケースを強い力で握りしめる。 

「勝手に決めんな」
小さく吐き捨てる。
「離れるかどうか決めるのは俺もだろ」
  
(『何が返す』…だよ。ほんとわかってねぇな) 
 
「バカかよ」    
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