終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
結局、名前が"渡瀬(わたせ)"から"藤垣"に変わったのは、小四の頃だった。  
母との暮らしは大変だったけど、悪くなかった。
何より御曹司の肩書きが外れて、友だちもやりたいことも自由だった。

『綾人、私の跡を継がないか』
『は?』

高二の冬、親父の秘書に連れられた社長室。
久々の再会で言われたのは、「後継者として親父の元で働け」だった。

俺には、異母妹が二人いるらしい。
他所で女とヨロシクやってたくせに、今さら息子の俺に継げという虫の良さに断った。

それから数年後。
『渡瀬社長、こちらが今年度の新入社員たちの資料です』
『ふむ……"藤垣"ねぇ、なるほど』      
 
クソ親父の力は要らない。
自分で登れるとこまで行ってやる。
俺を奮い立たせたのは、自分たちを捨てたクソ親父を見返すこと。

ただ、それだけだった。  
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