終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
第24話 鑑賞用に恋をした
「バカかよ」
「返すとか言っといて」
中身のないケースを見る。
アンクレットは、きっと今も彼女の左手首にいるんだろう。
「一番返せてねぇじゃねぇか」
スマホと車のキーを素早く掴む。
「迎えに行くに決まってんだろ」
マンションを飛び出し、車に乗り込む。
エンジンをかけた瞬間、不意に思い出した。
初めて、あいつと会った夜のことを。
「……王子?」
聞き慣れない呼び方に、思わず視線を上げた。
カウンターの隣から、こっちを見てる女。
——それが、志穂の第一声だった。
「何だそれ」
「だって顔だけでしょ?」
あっさり言い切って、グラスを傾ける。
「王子っていうか……鑑賞用?」
「恋とか面倒だし、見る分には最高だけど」
——鑑賞用?
(……は?)
思考が、一瞬止まる。
今まで散々言われてきた。
かっこいいだの、素敵だの、付き合ってほしいだの。
でも、「興味ない」って顔で言われたのは、初めてだった。
しかも、“顔しか見てない”って意味で。
(……なんだこいつ)
普通なら腹立つはずなのに、妙に引っかかった。
「名前は?」
「なんで?」
「呼ぶとき困るだろ」
「別に呼ばなくていいじゃん、王子で」
けらけらと笑う。
気を遣う様子もない。
距離を詰めてくるでもない。
媚びるでもない。
(……こいつ)
“藤垣”を見てない。
“綾人”ですらない。
ただ、 目の前の“男”として見てる。
それが、やけに新鮮だった。
その日から、気づけば目で追ってた。
他の女と何が違うのか。
確かめたくて。
——いや、
最初から、わかってたのかもしれない。
『知らねぇ女が婚約者とか、無理』
あの日、そう言ったのは本音だ。
でも、
「志穂がいい」
あれも、嘘じゃねぇ。
理由なんて、後付けでいい。
ただ一つ確かなのは——
誰も代わりにはなれないってことだけだ。
「返すとか言っといて」
中身のないケースを見る。
アンクレットは、きっと今も彼女の左手首にいるんだろう。
「一番返せてねぇじゃねぇか」
スマホと車のキーを素早く掴む。
「迎えに行くに決まってんだろ」
マンションを飛び出し、車に乗り込む。
エンジンをかけた瞬間、不意に思い出した。
初めて、あいつと会った夜のことを。
「……王子?」
聞き慣れない呼び方に、思わず視線を上げた。
カウンターの隣から、こっちを見てる女。
——それが、志穂の第一声だった。
「何だそれ」
「だって顔だけでしょ?」
あっさり言い切って、グラスを傾ける。
「王子っていうか……鑑賞用?」
「恋とか面倒だし、見る分には最高だけど」
——鑑賞用?
(……は?)
思考が、一瞬止まる。
今まで散々言われてきた。
かっこいいだの、素敵だの、付き合ってほしいだの。
でも、「興味ない」って顔で言われたのは、初めてだった。
しかも、“顔しか見てない”って意味で。
(……なんだこいつ)
普通なら腹立つはずなのに、妙に引っかかった。
「名前は?」
「なんで?」
「呼ぶとき困るだろ」
「別に呼ばなくていいじゃん、王子で」
けらけらと笑う。
気を遣う様子もない。
距離を詰めてくるでもない。
媚びるでもない。
(……こいつ)
“藤垣”を見てない。
“綾人”ですらない。
ただ、 目の前の“男”として見てる。
それが、やけに新鮮だった。
その日から、気づけば目で追ってた。
他の女と何が違うのか。
確かめたくて。
——いや、
最初から、わかってたのかもしれない。
『知らねぇ女が婚約者とか、無理』
あの日、そう言ったのは本音だ。
でも、
「志穂がいい」
あれも、嘘じゃねぇ。
理由なんて、後付けでいい。
ただ一つ確かなのは——
誰も代わりにはなれないってことだけだ。