愛とか恋とかウザいので

5・新しい暮らしの中で気付くこと

 蒼弥が秘書の塩井を伴って出先から戻ってくると、受付のスタッフが声をかけてきた。

「会長より、戻られたら会長室に来るようにと、伝言を承っております」

「わかった」

 面倒だとは思うが、受付のスタッフに文句を言っても仕方ない。
 蒼弥は返事をして、エレベーターへと向かう。

「そろそろバレたかな」

「社長、あの……」

 蒼弥の呟きに、一緒に乗り込んできた塩井が、もの言いたげな眼差しを向けてきた。
 萌依との婚姻届けを出したのは、十日前の土曜日。
 週明け、共に仕事をする塩井と渥美にはそのことを伝えたが、重之には相手が気付くまで黙っておくつもりでいた。
 とはいえ同じ会社に勤めているので、そろそろバレる頃だろうとは思っていたのだ。

「会長のもとには、俺ひとりで行く。君は先に戻っておいてくれ。その後は、所用でそのまま出る」

「おひとりで、ですか?」

 塩井が少し怪訝な顔をする。
 普段、蒼弥の外出時には誰かしら秘書を同伴させるからだ。
 蒼弥はその問いに頷く。
 もともと、すぐに出る予定があるのに一度帰社したのは、塩井と離れて単独行動を取りたかったからだ。

「些細な雑事を片付けてくるだけだから、すぐに戻る」

 それ以上の質問は不要と、表情で示して、蒼弥はエレベーターを下りる。社長室の前で塩井と別れて、蒼弥は同じフロアの奥にある会長室へと向かった。
 ひとり廊下を歩きながら、蒼弥は萌依との暮らしを振り返る。
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