【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
第七章:この先の人生も、ずっと君と一緒にいたいから。
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「これで搬入は以上となります!ありがとうございましたー!」
「こちらこそ、ありがとうございます!」
段ボールだらけの、真新しい1LDKのアパート。
これが悠里自らの力で得た自分の家だった。
「……よし、荷解きしなくちゃね」
悠里は三日間の有給を使って、誰に頼ることもなく一人で引越しの作業を進めていた。
希望通りに審査が通ったこの部屋は、築十五年の割と新しい物件で、一人で暮らすには十分すぎるほど綺麗だった。
──これでいい。ちゃんと自分の足で立たなければ、対等に彼を愛することなんてできないのだから。
なにより「自分の力で借りた」という事実が、悠里の心に確かな自立の自覚を持たせてくれていた。
けれど、ふとした瞬間に胸が締め付けられる。
『俺はもう、悠里ちゃんなしでは生きていけない』
あの日、涙を浮かべて縋ってきた理人の顔を思い出すと、今でも視界が滲んで段ボールの文字が歪んでしまう。
「(理人くん、今頃どうしてるだろう)」
悠里が理人とこれから先の話をした翌日、社長から直接縁談の話を持ちかけられているはずだ。
あの優しくて不器用な理人のことだから、きっとギリギリまで悩ませてしまっているかもしれない。
彼を深く傷つけてまで突き放すように家を出てきてしまったことを後悔している弱い自分が、未だに弱音を吐いてくる。
けれど、理人には彼の才能を生かせる、輝かしい未来の選択がある。
「……これでよかったんだよ。理人くんのためには」
悠里は誰に言うでもなく一人でそう呟いて、ポタポタと落ちた涙を乱暴に手の甲で拭いながら段ボールを開封していった。