【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。
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それから時は少し経って、二月になった。
まだまだ寒い日は続く一方で、理人はプロジェクトのトラブルが発生してしまい、再び長期の出張に出てしまったせいで会社でも顔を合わせることはなかった。
その出張に今回は紗彩も同行していると真紀子から聞いたとき、悠里は不覚にもチクリと激しく胸が痛むのを感じた。
これからの選択を理人に託してしまった以上、悠里が口を出すわけにはいかない。
〝その男がいつまで悠里のそばにいてくれると思うの?〟
〝いずれ、彼も僕と同じ選択をすると思うよ?〟
〝今のご時世、がむしゃらに頑張れば上に登れるわけじゃないんだ。彼だって、いつ出世の欲に駆られてしまうかわからないだろ?〟
裕一の呪いのような言葉が蘇ってくる。
悠里に植え付けられたこのトラウマを癒すには、こうするしかなかった。
そうとわかってはいても、一人になると余計なことばかり考えてしまう。
一人で食べるご飯は味がしなかった。何を作っても「美味しいね!」「悠里ちゃんの手作りご飯を食べられる俺って多分世界一幸せ者だと思うんだよね」と真顔で言ってくれた彼のことを思い出す。
どれだけ部屋をあたためても、一向に温もりを感じられない。「寒い日はこうやって、おじいちゃんとおばあちゃんになってもお揃いのマグカップを使って一緒にココア飲もうね」と平気でそんなことを言ってくれた理人の言葉が蘇る。
お互いにとって正しいことをしたはずなのに、どうしてもあのときの幸せな記憶が顔を出しては忘れさせてくれない。
「……理人くんに、会いたい」
苦しくて、もどかしくて、悠里は一人で膝を抱えながら涙を流すことしかできなかった。