ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。
「一度目」の終わり
春の嵐が、新居の窓を叩く夜。
とりあえず掛けただけのレースカーテンが、稲妻の青白い光に透けた。
閃光が走るたび、窓辺へ駆け寄りはしゃぐところは、俺が出会った十八歳の彼女のままだ。
段ボールの匂いが微かに残る部屋の真ん中。
小さなローテーブルで、マナが頼んだ宅配ピザを囲む。
「荷解き、手伝ってくれてありがと。本当に助かった」
「マナ一人じゃ、永遠に終わらなかったな」
彼女は唇を尖らせつつも「事実だから言い返せない」と、へらっと笑った。
その手には、結露した缶ビールが握られている。
まだ飲めない年齢の俺を気にしているのか、彼女はいつも遠慮するが、今夜は俺から勧めた。
専門学校を卒業して社会人になり、この小さな部屋で一人暮らしを始めるマナ。
そして、大学の入学式を終えたばかりの俺。