スパダリの溺愛はスーツを着崩すように

第11話 遼side ずっと前からほどかれていた

社長室の椅子に深く腰掛け、緩めたネクタイに指をかけた。

「余裕ないな…俺…」

彩乃のことになると、どうしても冷静でいられない。

思えば最初からだった。
高崎彩乃。
初めて出会ったのはKUROSAWAの採用面接だった。
あの日、俺は面接官として彩乃の前に座っていた。

「高崎さん、弊社を志望した理由を聞かせてください」

そう尋ねた瞬間、彩乃の瞳が輝いた。
そこから始まったのは、想像を超える熱弁だった。
商品のデザイン、ブランドの世界観、初めて手に取った時の感動。彩乃は宝物を語るように話した。

「す、すみません!つい夢中になってしまって…!」

思わず口元が緩む。


面白い子だ。


それが高崎彩乃の最初の印象だった。
これまで多くの志望者と向き合ってきた。
あれほど目を輝かせてKUROSAWAの愛情を語る人は珍しかった。


彩乃はKUROSAWAと言う名前に惹かれたんじゃない。
俺が生み出す物を心から愛してくれていた。


たまらないほど嬉しかった。


彩乃は深々と頭を下げて面接室をあとにした。
扉が閉まっても俺はしばらくその先を見つめていた。
どうしたんだ…俺…。


たった数分話しただけの女性のはずだった。


それなのにあの熱心に楽しそうにKUROSAWAを語る彩乃が頭から離れなかった。
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