王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
16.
 メルケルの診察を受けたところ「これならば、少しずつ歩いても問題はないようですね」という言葉をもらった。エメリーネはやっと杖を手放すことができたが、それでも少しだけ足をひきずって歩く。いきなり元気に歩いては、誰だって不思議に思うだろう。
 一方、アルマスは依然として王妃のお礼状を見せることを渋っていた。
「どこかにしまい込んでしまったようで……見つからないのです。申し訳ありません」
 彼のオーラは以前のような真っ黒ではなく、濃い灰色に変わっていた。まるで彼の秘書官と同じ色だ。
 アルマスに何か変化があったのだろうかと、エメリーネは内心、小首を傾げた。
(もしかして、オーラはその人の気持ちが色になって現れたものかしら?)
 アルマスの黒いオーラは苛立ちや敵意を表していたのかもしれない。パーティーで見かけた黄色や緑のオーラは、楽しげな雰囲気を反映していた。一方で、赤や紫のオーラを持つ人もいた。
 エメリーネは唇を軽く噛み、考えを巡らせる。
(これはきちんと考える必要がありそうね。気持ちが色でわかるのならば、駆け引きもやりやすくなるもの……)
 何より、エメリーネは世情に疎い。最低限のマナーは身についていると自負するが、それ以外はさっぱり自信がない。特に、政務や社交の複雑な駆け引きができるとは思えない。
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