王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
18.
 エメリーネがすっと右手をあげると、赤い覆面をかぶった処刑人が斧を振り上げる。
 人形の首が落ちたかのような光景に、エメリーネは動けずにいた。だがそれを命じたのはエメリーネだ。
『正しいのは、私だ。悪女がこの国を統治するかぎり、同じことを繰り返す。同士よ、立ち上がれ』
 処刑されたのは、ラモン伯爵だった。
 だが彼は何も悪くない。ただ議会で、アルマスの意見に対して、自分の言葉を述べただけ。だというのに、それを女王エメリーネに対する反逆罪としてでっち上げられ、こうして今、彼の処刑が実行された。
 ラモン伯爵夫人は母の友人で、娘のシーラはエメリーネ付きの侍女だった。
 だがそれも数年前までの話。夫人もシーラも、今ではエメリーネの元を去っている。
『エメリーネ女王、毅然とした態度でお願いします』
 そう耳元でささやくのは宰相アルマス。今ではエメリーネの婚約者として、さらにその地位を盤石なものとした。
 エメリーネはその言葉に頷くことしかできない。
『処刑されたくなければ、わたくしの言葉に従いなさい』
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