王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
 自分を鼓舞して、エメリーネは広場に集まった者たちを睨みつけながら、そう声を張り上げた。
 歓声と怒号が入り混じる。エメリーネに向かって何かを投げたそうに手を震わせている者は、兵に取り押さえられていた。
 風が吹き、辺りに血の匂いをまき散らす。
 エメリーネは振り返りもせずに、アルマスに連れられその場を後にした。
 だが、どこか遠くですすり泣く声が聞こえ、それが耳にこびりついて離れない――。

「……はっ、夢……?」
 エメリーネは目を覚ました瞬間、身体にまとわりつく汗と、喉の渇きに襲われた。寝衣が肌に張り付き、悪夢の残滓がまとわりついている。
 水差しを見つけ、震える手でグラスに水を注ぎ、一気に飲み干した。冷たい水が喉を潤すと、ようやく現実が戻ってきた。あれは一度目の人生の記憶、女王に即位し、アルマスの操り人形としてラモン伯爵を処刑した場面だった。
 エメリーネはそれを拒んだが、アルマスや大臣たちは、ラモン伯爵をこのまま生かしておくのは、今後の王政に影響を与えると言い出した。
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