王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
14.
「いったい、どういう風の吹き回しだ? 俺に家庭教師や補佐官を紹介してほしいとは。そちらのラモン伯爵の令嬢に尋ねたほうがいいのではないか?」
 部屋の隅に立っているシーラは、気まずそうに眼鏡を直し、小さく肩をすくめる。
「えぇ、シーラにもお願いしました。伯爵夫人はわたくしの母の友人であり、わたくしも信頼している女性です。伯爵夫人にわたくしの教育係をお願いできないかと相談したのですが……」
 エメリーネはそこで言葉を切り、顔を伏せて小さく息を吐いた。
「シーラの婚約者がオウネル侯爵家の者なのです。オウネル侯爵家は、どうやらアルマスから援助を受けているようでして」
 オディロンの口元が、ひくっと動いた。
 彼の鋭い瞳がエメリーネを捉え、意図を瞬時に汲み取ったようだった。
 エメリーネは内心で安堵した。彼なら、きっとわかってくれる。
「どうやら王女様は、とことん宰相閣下と縁をもちたくないようだ」
 その言葉を聞いたエメリーネは顔を上げ、力強くオディロンを睨みつけた。
「もちろんです。あの男の企みを知ってしまったから」
「企みだと……?」
< 89 / 154 >

この作品をシェア

pagetop