冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

恭司side

 恭司はぽつぽつと呟くと乾いた笑顔を浮かべる。

「は……」

 ここ最近はずっと美桜のいう幸せな家庭についてばかり考えていた。
 自分にはうまく想像が出来ないものだったけれど、漠然と美桜や子どもちたちや動物たちに囲まれて過ごすのは楽しそうだと、まるで童心に還ったかのように気持ちが弾んでいたのに。

「そもそもまともな家庭で育ってない俺が所帯を持とうと思ったのが間違いだったんだな」

 恭司はのろのろと机の上に顔を沈めた。
 難波がいよいよもって心配した声を上げる。

「恭司、おい……本当に大丈夫か?」

 恭司はぼんやりちした頭で悶々と考える。
 ――美桜が実家に帰るといっていた。
 問題があると電話口で話していた。
 マンションに戻ったら――話の続きを耳にしないといけないだろう。
 美桜の口からいったい何を告げられるのだろうか?
 もしかすると順一との縁談話についてなのだろうか……?

『新宮部長に結婚を申し込まれました。もう恭司さんのそばにはいれません』

 黒猫ミオを抱っこした美桜が恭司の元を去っていって順一の元に向かうビジョンが浮かんでくる。
 想像だけで胸が苦しくなって息がしづらくなってくる。グラスを持つ手指の力が入らなくなる。
 ――自分のそばから美桜が離れるのがこんなにも怖いなんて……。
 恭司は自嘲した。

「知らなきゃ良かったな、こんな感情」
 
 こんなにも美桜の気持ちが手に入らなくて苦しいのなら……。
 気付かなければ良かった。
 ――自分の胸の内を美桜が占拠してしまっている事実に。



< 124 / 179 >

この作品をシェア

pagetop