冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
「演技……?」
そうして順一が太陽のような満面の笑みになった。
「相変わらず美桜ちゃんは純真やな。恭司兄さんの会社を潰す話は嘘なんや。つまるところ、ドッキリなんや」
「え……ええっ!? ドッキリ……!?」
美桜はしっぽを膨らませた猫のように目を真ん丸にして驚いてしまった。
――まさか話の途中から嘘だったなんて……!
「恭司兄さんが何を思って美桜ちゃんに近づいたかも、美桜ちゃんの思ってる通り、所詮は僕の憶測なんや」
順一の真っ正直な反応に美桜は驚きを隠せない。
(まさか演技だったなんて……!)
とはいえ、今のようにちょっと面白い雰囲気で場を和ませようとしたりしてくる方が、美桜の知る順一らしいとは思う。
しかしながら……。
「どこからが演技でどこからか本気なのかは存じ上げませんが、誰かを貶めるような嘘を吐いたりする行為は、いくらドッキリでも好きではありません」
美桜がハッキリ告げると、順一がしばらく黙った。
「ここまで自分を曲げて頑張っても美桜ちゃんは僕にはなびいてくれへんのや。それなら、僕も正々堂々とした方が良いなって、美桜ちゃんの話を聞いてな思ったんや。嘘ついて悪かった。許してほしい」
なんとなく順一が困ったように微笑んだ。
美桜の瞳が揺れ動く。
「……新宮部長」
順一なりに美桜の気を惹きたくて一生懸命だったということだろう。
そうして、順一が唇を引き結ぶと真面目な表情で語りはじめる。
「せやけど、恭司兄さんに縁談話が来ているのは事実や」
ドクン。
美桜の心臓が揺れ動く。
昼に見たWEBのニュース記事が頭の中にチラついてくる。
順一が語りはじめた。
「元々、僕の婚約者はね、恭司兄さんのことが好きやったんや。やけど、家の都合で兄さんやなくて弟の僕と婚約者になってもうたんや。せやから、僕との噂のせいで僕の婚約者が不幸になったって、美桜ちゃんが思ってるんなら、そんなことはないから安心してえや。むしろ好きでもない奴と別れられたってホッとしとるはずや」
ドクンドクンドクン。
美桜としては、順一の元婚約者が不幸になっていないのは良かったものの、彼女の想い人が恭司だという話が引っかかってしまった。
順一が淡々と続ける。
「元婚約者さん、かなり派手目な美人でな、僕としても一緒に過ごして息苦しかった。あんな美人と釣り合うのは恭司兄さんぐらいしかおらへんって……って、ああ、美桜ちゃんを馬鹿にしてるわけやないんや。美桜ちゃんは可愛いし、僕としてはすごく癒されるねん」
美桜はなんとなく元気が出ない。
「僕の元婚約者は旧華族の出身でな、かなりええとこのお嬢さんなんよ。恭司兄さんとうまくいったら、兄さんの事業にかなりええ影響が出ると思う。莫大な利益をもたらす存在や」
ドクン。
――誰かと自分を比較しても悲しくなるだけだと分かってはいるけれど……。
(あの写真の女性は、恭司さんに莫大な利益をもたらす存在。だけど、自分は……)
恭司に対して何か有益なものなど持ち合わせていない。
だとしたら、恭司は写真の女性とうまくいく方が幸せになれるのではないだろうか――?
ふと、美桜は気になったことを順一に尋ねてみることにした。