冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

恭司side

 恭司が次に目が覚めた時、もうすっかり陽が差していた。
 冬なのにこんなに明るいなんて――始業時刻間近な気がする。
 遅刻だとか代表取締役社長として示しがつかない。

「……っ、いてえな」
 
 頭がズキズキ鈍く痛んで仕方がなくて、恭司が黒髪ごとクシャリと額に手をやった。
 朝には弱いが、こんなに眠り呆けてしまったのは、ドイツで美桜に出会った時ぐらいのように思う。
 そこで恭司は我に返った。
 勢いよく身体を起こす。

「美桜……!」

 ズキンと今度は鋭い痛みが走ったが――それどころではない。
 周囲を見渡すが、彼女の姿は影も形も存在しなかった。
 彼女が寝ていただろう場所はひんやりしている。
 シーツをめくってみたが、いつかのように丸まって寝転がっているわけでもなさそうだった。
 恭司の胸が嫌な音を立て始める。

「俺は……」

 ガランとした部屋の中、自分の心臓の拍動だけがやけに耳元で聴こえるかのようだ。
 胸がやけに重苦しくて息がしづらい。手指に力が入らない。
 昨晩の記憶が徐々に戻ってくる。

(昨日、美桜が順一に笑いかけているのを見て……)

 自分こそが二人の邪魔をしていると思って、本当は早く帰ってやると約束していたのに、マンションに帰って事実を突きつけられるのが怖くて、難波を呼び戻して酒を飲んでやり過ごそうとしたはずだ。
 そうして、いつもなら全く酔わないのに、普段なら飲まない量の酒を飲んだ結果、難波にマンションまで送ってもらうことになって……。
 そこからの記憶が曖昧だ。
 こめかみが拍動して全身の血管が沸騰しそうなぐらいにざわめいている。

(俺は何をした……?)

 この部屋に戻ってきた自分は――。
 ……裸の自分。
 ベッドの外に自分の衣服が脱ぎ捨ててある。
 どうにも夢と現の境が不明瞭だ。
 そんな中、断片的に記憶が戻ってくる。

『最後だから、俺の好きなように抱かせてもらう』

『あっ……恭司さん……っ、最後って、どうして…………』

 激しく乱れたシーツを見て、恭司は血の気が一気に引いていくのを感じた。

「……取り返しがつかないことを……」

 恭司の漆黒の瞳が忙しなく揺れ動く。
 唇が震える。手指が戦慄き続ける。
 胸が塞いで言葉が出ない。
 自暴自棄になっていたのだ。
 せっかくそばに置いておきたいと思った女性ができたのに――自分よりも多くのものに恵まれて育ってきた異母弟・新宮順一に――幼少期からずっとコンプレックスを感じていた存在に――奪われるかもしれない。否、初めから異母弟のものだったのかもしれない。
 美桜が順一のことをずっと愛していたのかもしれない。
 そんな風に自分を追い詰めた結果、酒の力も相まって、自分自身の感情の制御が出来なくなってしまった。
 けれども……自分が傷ついたからといって、大事な女性を傷つけていいはずがない。
 
(愛想を尽かして出て行ったのか。当然だな)
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