返事も溺愛もキスのあとで

エピローグ〜キスのあとで愛してる〜

※※

「美味しいっ」

クルーズ船の中で、目の前に広がる東京湾の夜景を横目に、私は目を輝かせた。

彼とフレンチのフルコースを堪能しているのだが、鯛のカルパッチョのあまりの美味しさに声が漏れてしまったのだ。

後方に控えている客室ボーイの目を気にして、はっとした私を見ながら鷹哉さんが笑った。

「貸し切りなんだ。別に声を気にしなくてもいいよ」

「うん、でもなんとなく静かにしないといけないような気になっちゃって」

鷹哉さんが三か月の記念日にと連れてきてくれた貸し切りクルーズ船は、フランスの有名な豪華客船をモチーフにしており、室内はラグジュアリーなソファーや家具が並び、広々としてプライベートデッキも兼ね備えている。

船に乗ったこともなければ、海も行ったことがなかった私は目に映るものすべてが新鮮で、ここに来てからずっと浮ついている。

「雛子が海が初めてだったとはな」

「うん。ほら小さい時、住んでたところ田舎だったでしょう? 川は鷹哉さんとも行ったりしたけど、海はなかったから」

「確かにな。今年の夏休みは夏季休暇の日程を合わせて海外でもいくか」

「え……っ、海外?!」

「ああ、雛子と海で一緒に泳ぐのも楽しそうだ。グアムかハワイはどうだ?」

彼がカモとフォアグラのソテーをナイフとフォークで華麗に切り、口に運ぶ。

「それなら日本の海は? 淡路島とかも行って見たいなって」

「淡路島も行こう。ただし日本の海で泳ぐのはダメだ」

「え? どうして?」

赤ワインのグラスを揺らしながら、彼がこほんと咳払いする。

「その、なんだ……」

「鷹哉さん?」
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