返事も溺愛もキスのあとで
「……雛子の水着姿を見せたくないんだ」

「あ、えっと……なるほど」

小さな声で頬をほんのり染めて、可愛い独占欲を発揮する彼に嬉しいのに恥ずかしい。

「海外の方がプライベートビーチが充実してるから」

「わかった。じゃあ今度パスポート取りに行くね」

「ああ。また夏の旅行についても計画を立てような。これは余談だが、お祖父様がジェットとビーチを所有していて、それを口実にだと思うがロスにも遊びに来て欲しいと言っていたよ」

「私もまたお祖父様にお会いしたい」

会長は姫原さんたちの事件もあり、予定より長く日本に滞在していたのだが、つい先週ロスに帰られたのだ。

「喜ぶよ。ありがとう」

「ううん、全然だよ」

いつの間にか空になった私のワイングラスにすぐにボーイがやってきて、新しく注いでくれる。

ボーイが離れ、元の位置に戻ると、鷹哉さんがふいにスマホをジャケットから取り出した。

メールだろうか。彼は素早く確認すると、ふうと息を吐き出した。

「お仕事? 大丈夫?」

「いや……弁護士から連絡がきて、姫原たちの裁判の準備が整ったそうだ」

「そう、なんだ」

私への侮辱や名誉棄損罪、更には三日月製菓コーポレーションへの建造物侵入罪で姫原さんと守が逮捕されてから数週間が経過していた。

警察に突き出し、取り調べが始まった三日後には、異例の速さで彼女らの懲戒免職が決まった。姫原さんのコネ入社及び、防犯カメラ映像を勝手に操作した協力者の男性社員も同様に解雇された。

またSNSへの私への誹謗中傷は、鷹哉さんがシステムに詳しい人がいると話していた通り、翌日には全て削除され心から安堵した。

その後の警察とのやり取りや裁判については、主に日本にいる間に会長が取り仕切ってくださり、私が鷹哉さんと一緒に警察へ出向いたのは一度だけだ。

「……二人はどうなるのかな」

「まぁ、執行猶予がつくかどうかが争点のひとつだが、どちらにせよ社会的地位ははく奪される。今後、まともな職に就くのはほぼ難しいだろうな。石垣の家は会社を経営していたらしいが、今回のことでSNSから身元が特定され、誹謗中傷から廃業に追い込まれたらしい」

「そう……」

守の自業自得といえばそうなのだが、何もしていない守の家族まで巻き込まれたと知ると、気持ちは重くなる。
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