あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
今日は、乗りません
土曜の夕方、駅前で待ち合わせた。
仕事外で会うのは、初めてだった。
改札を出ると、柱の横に篠宮が立っていた。
紺のニットに、グレーのコート。
袖口から、いつもの腕時計が覗いている。
通りすがりの二人連れが、すれ違いざまに一度振り返って、小さい声で何か言った。
俳優、という単語だけ聞こえた。
(社外でも、あれ言われるんだ……)
連れて行かれたのは、路地の奥の小さな和食の店だった。
カウンターと、小さな座卓が二つ。
焼き場から、魚の脂の爆ぜる音がしている。
予約は篠宮の名前で入っていた。
カウンターの中の大将が、篠宮の顔とこのみの顔を順番に見て、にこりとした。
「彼女さん?」
固まったのは、このみだけだった。
「はい」
篠宮は、在庫の確認みたいな速さで答えた。
大将が「ごゆっくり」と笑って、奥へ入っていく。
(即答……即答だった、今の)
座卓に着いてからも、耳の熱がしばらく引かなかった。
「よく知ってましたね、こんなお店」
「仕事上、いろいろな会社を点々とするのですが、そんなとき行きつけを作るのが、ちょっとした楽しみになっているんです。このみさんは魚が好きなので、喜んでもらえるかと」
コンビニのカゴの中身を、覚えられていたようだ。