あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
段ボールの名前
翌日の昼、社食で列に並んでいると、営業部の岡本くんに声をかけられた。
営業時代の一年後輩で、今も廊下で会えば喋る数少ない相手だ。
「倉橋さん、久しぶりっす。……ていうか今、大変っすよね」
人懐っこい犬のような顔をした岡本くんは、私よりずっと大きいはずなのに、可愛らしく感じる。
「まあね。岡本くんとこも、ピリピリしてる?」
「してますしてます。あの、それでですね」
岡本くんは声を落として、トレーごと半歩近づいてきた。
そして、耳元でささやく。
「俺、何回か人事さんに打ち合わせの打診出してたんすよ。そしたら毎回、篠宮ってひとの名前で断りが来て。……だから、直接」
「え、そうだったの?」
「今度、飯でも行きません? 営業のみんな、ほんとは人事に聞きたいことだらけで。俺が代表して、こう、ざっくばらんに」
「私に聞いても、答えられないことのほうが多いよ」
「いやいや、雰囲気だけでも。ね、金曜とか──」
「倉橋さん」
声は、列の外から来た。
篠宮が、トレーも持たずに立っている。
いつもの打ち合わせの声より、半音低かった。