あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
このみは急いで資料を片付けながら、席を立ちかけた。
ふと、篠宮のノートパソコンの画面が目に入った。
対象部門の名簿が開かれている。
ちらりと見えて、このみは目を疑った。
名前の横に、等級と評価の記載がある。
もちろん、そこまでは分かるのだが、その先の列に、細かい書き込みがあった。
──扶養家族二名、下の子が来春受験。
──住宅ローン残十八年。
通勤圏は車で四十分まで。
──フォークリフト免許、玉掛け。
原紙ロールの搬送担当。
隣県の物流大手が通年募集。
「……これ、篠宮さんが全部?」
「何がですか」
「家族構成とか、資格とか。ここまで調べるんですか」
篠宮は画面から目を離さずに答えた。
「退職勧奨には再就職支援がつきます。移れる先が見えていないと、支援は設計できません。切って終わりではなく、次の職場で働き始めるところまでが、再建です」
「……それも、効率ですか」
「効率です」
二度目の「効率です」だった。
本当に効率だけを目指すなら、そこまでしないで切り捨てたほうが速いに決まっている。
画面の中の一人ひとりに、行き先の候補が書かれている。
まだ誰も切られていないのに、もう、切られた後のことまで考えられている。
(この人の「切る」は、私の知ってる「切る」と、たぶん違うんだろな)
喉の奥が、また、ぐ、となった。