あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
訂正はしません
「お答えします」
篠宮の声は、変わらなかった。
「対象者のリストは存在しません。人員施策を行う場合、選定基準を先に全社へ開示します。基準より先に名前が決まることは、私がいる限りありません」
「信じられるか! 現にあんたら、二人で工場まで来て、こそこそ調べて回って──」
「工場までお伺いしたのは確かです。ただ、リストラ対象を見つけるためではなく、あくまでも現状の会社のデータを正しく集めるために伺わせていただきました。そして、データ収集自体は私の指示で行っております」
「その言い方が信用できないって言ってんだ! 外部のあんたはいいよ、終わったら消えるんだから! だけどな、社内にいて、俺たちの給料も家族構成も全部知ってて、それを差し出してる奴がいるってのが──」
言葉の途中から、もう、体が動いていた。
気づいたときには、受付席で立ち上がっていた。
後ろから、千夏が袖をつかもうとしてくれたのが見えた。
「──人事部の、倉橋です」
自分の声が、講堂に響いた。
マイクなしの声は思ったより震えていた。
何百の顔が、一斉にこちらを向く。
壇上の篠宮が、初めて、予定にない動きをした。
マイクを握りなおし、何かを言おうとする。
ただ、このみのほうが早かった。