あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「常務、来るんだ」
千夏が小声で言った。
「役員って、こういうのには出ないもんだと思ってた」
「……現場を大事にする人、ってことになってるから」
なってるから、という自分の言い方が、少し意地悪だったかなと思う。
ただ、訂正するつもりはないのだけれど。
篠宮の説明は、四十分きっかりだった。
売上と資金繰りの現在地。
撤退を検討する事業と、その基準。
再就職支援の中身。
そして、希望退職を含む人員施策を、選択肢から外していないこと。
数字は、全部そのまま出された。
「総合的に勘案し」も「慎重に検討し」も、一度も出てこなかった。
会場は、静かだった。
空調の音が大きく聞こえる。
質疑に入って、三人目までは、事務的な質問が続いた。
早期退職の割増率はいつ決まるのか。
支援会社はどこか。
篠宮は答えられる部分を答え、決まっていない部分は、いつまでに決めるかを答えた。
空気が変わったのは、四人目からだ。
「──あんたの話は分かった。分かったけどな」
壁際の、作業着の一団の中から、声が上がった。
マイクを待たずに、地声で叫んでいる。
「リストはもうあるんだろう。何ヶ月も前から、人事が数字を集めてるのはみんな知ってるんだ。等級がどうの、残業がどうのって。……あんたの隣で、リストを作ってる人事がいるんだろう!」
心臓が、直接つかまれた気がした。
(……私だ)