あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
「データを集めているのは、本当です。等級別の人員分布も、時間外の推移も、私が、この手で集めました」
ざわめきが、波みたいに広がる。
認めた、という声が聞こえた。
「でも、本当にリストラリストのようなものはありません。それから……これだけは、言わせてください」
このみは息を吸う。
社員たちから、責めるような目線を向けられると、つい、三年間、窓口で言い続けてきた言葉が、喉元まで上がってくる。
規定ですので。
決まっていませんので。
お答えできかねますので。
ただ、その言葉たちを、一度、飲み込んだ。
「私はこれまで、決まっていませんので、という言い方で……ずっと、逃げてきました。分からないことを、分からないまま流して、制度のせいにして。今日から、やめます。今日答えられなかったことは、私が調べて、答えます。時間は、かかるかもしれません。それでも、答えます。──人事への質問の宛先は、私です」
言い切った。
講堂は、静かだった。
壁際の作業着の列から、誰かがぼそりと言うのが聞こえた。
「……あの子、うちの研修に来てた子だぞ」
戸倉さんの声かどうかは、分からなかった。
篠宮が、マイクを取った。
「補足します。調査と回答の期限管理、および最終的な責任は、私が負います。──他に、質問は」