あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
計画は、壊さない
二十二時。
ホテルの部屋で、篠宮湊は送信ログの一覧を閉じた。
閉じても、頭の中では、今日の十五分がまだ再生されていた。
一身上の都合です、と言った冷たい声。
規定ですので、と言っていたころの、彼女の声。
それを、私が使わせた。
間に合わなかった場合はどうするんですか。
それに対して、すぐに答えることができなかった。
おそらく、名義を戻すだけで、噂は収まる。
ただ、万一収まらなければ──彼女を担当から外すのが、いちばん確実ではあるのだ。
一瞬、その計算をした。
だから、すぐに答えられなかった。
夕方、下の自販機で缶コーヒーを二本買った。
微糖の、いちばん平凡な銘柄。
買ってから、渡す相手がいないことに気づき、二本とも自席に持ち帰った。
水曜の夜は、彼女の机に置いてこられたのに。
今日は、その一本の置き場所すら、見つからなかった。
ノートパソコンで、社用メールの新規作成を開いた。
宛先に、彼女の名前を入れた。
件名は、埋まらなかった。
そのまま、パソコンを閉じた。
明らかにペースを乱されている。
自覚はあるが、いつも通りに戻れない。
それでも、やるべきことは変わらない。
湊は机の上に、集めたものを並べ直した。
材料は、揃っている。
一つ。
工場の複合機の送信履歴。
藤堂が「激励」と称して工場を訪れた日の十四時二十二分、経営企画の共有アドレス宛てに、三十四枚が送信されている。
戸倉から預かったミスプリントの一枚を足すと、集中業務スペース設置の稟議書に添付された資料の枚数と、ぴったり合う。
つまり、あの紙の出どころは藤堂の工場視察だ。