あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています

二つ。
その稟議書そのもの。
起案は経営企画部、決裁者は藤堂。
あの部屋は、正規の手続きの顔をして、藤堂の決裁で生まれている。

三つ。
十五年前の議事録。
百二十人が「自己都合」で退職した、あのときの記録。
「円滑な人員の適正化」──今回の稟議書の文面と、言葉の癖まで同じだった。

四つ。
噂の時系列。
月曜の朝、営業・経理・製造の三部署で、ほぼ同時に始まっている。
聞き取れた範囲で、最初に口にしたのは三人。
三人とも「誰から聞いたか覚えていない」と、揃って同じ答え方をした。
……揃って覚えていない、と言えること自体が、答えのようなものだ。

一枚ずつは、どれも決定打ではない。
ただ、四つを並べれば、全部が藤堂という一点で交わる。

経営会議は木曜。
議題の追加申請は、明日の朝一番に出す。
部屋の稼働停止の要求も、同じ申請書に書く。

夕方に届いた本社からの返信は、受信箱の一番上にある。
開かなくても、文面は一字ずつ思い出せた。

──クライアント役員に関する調査結果を、貴職単独の名義で議題化することは承認しない。

人事施策の範囲で対処されたい。

ピースフェリーの方針は、正しい。
再建コンサルの商品は信用だ。
そして、クライアントは藤堂含めた役員会だ。
役員を告発したコンサルタントに、次の案件を回す会社はない。
この業界は、狭い。

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