あなたを手放す予定は、私の計画にありません――冷徹な首切りコンサルに、規定外の溺愛をされています
第十一章 名義
私の独断です
水曜の夕方、課長がこのみの席に来て、一枚の紙を置いた。
あすの臨時経営会議の、議題通知だった。
並んだ議題の最後に、手書きで追加された一行がある。
──組織運営に関する調査報告(報告者:篠宮湊)。
「事務局から要請だ。人事から一名、記録要員で入れと。……部長が、お前を出せとさ」
「私、ですか」
「議題の追加申請が篠宮さん名義だからな。カウンターパートのお前が適任だろうと。……気が進まんなら、俺が代わる」
「行きます」
答えたのは反射だった。
指先は、あとから冷えた。
経営会議。
役員フロアの、一番奥の部屋。
三年この会社にいて、自分が入っていい場所だと思ったことは、一度もない。
(調査報告って、何の……?)
その夜、篠宮からは、メッセージの一つもなかった。
何も言ってこないのが、逆に、不気味だった。
木曜、九時五十分。
六階の役員会議室は、相変わらず静かだった。
廊下より二度くらい、空気が冷たい気もする。
長机の向こうにファンドの代表と担当が二人。
こちら側に役員が並び、その真ん中あたりに、藤堂常務がいる。
今日もにこやかで、隣の役員に何か言っては、柔らかく笑っていた。
このみの席は、壁際の記録席だった。
ノートパソコンを開いて、指をキーの上に置く。
指は、まだ少し冷たいままだった。