スパダリ御曹司はスパダリ偽装妻を溺愛で囲い逃がさない

*(side 北斗)

「今夜はとことん、甘やかしてあげる」

 俺はなるべくスマートにそう言って、琴子を優しくベッドルームへエスコートする。だけど心の内では、独占欲と熱情が滾っていた。

 ワイングラスを彼女の手から引き抜いたのは、彼女の逃げ道を塞ぎたいと思ってしまったからだ。

『その反応は、ふたりきりだと意識してくれているということか?』

 そう告げたのは、俺の中で彼女への気持ちが暴走していたから。
 琴子を傷つけまいと思うのに、琴子を目の前にするとどうも理性が飛んでしまう。だから彼女が仕事のことに逃げてくれるのは、俺にとってもありがたかった。

 はずなのに――。

『北斗さんが、忘れさせてくれませんか? 私に、仕事のことを』

 彼女のその言葉を聞き、一瞬、思考が完全に停止した。照れ隠しの仕事トークを脱ぎ捨てて、俺に向き合ってくれているのだと理解したのだ。

 自惚れてもいいのだろうか。彼女が俺に〝男〟として、求めてほしいと伝えているのだ、と。
 わずかな理性で踏みとどまっていると、琴子は顔を真っ赤にしたまま、続けて言った。

『北斗さんに、もっと甘えていいんですよね?』

 その言葉に、残りの理性も崩れ去った。
 今すぐ彼女を抱きつぶしてしまいたい衝動を必死に抑え、彼女の手の甲に優しく口づけ、彼女をここまで誘ってきたのだ。

 ヴィラのベッドは、キングサイズのものがひとつ。俺はその縁に琴子を座らせ、自分も隣に腰かけた。
 本当は、今すぐ彼女のすべてを奪いたい。だけど、彼女を壊してしまいたくはない。

「嫌だったら、はっきりと伝えてほしい」

 琴子はいつも自分の気持ちを隠そうとする。初めてキスをした後、彼女がそれについて追及してこなかったことも、ずっと胸に引っかかっていた。
 だが今、琴子は目の前で恥ずかしそうにもじもじしながら、俺の声に顔を上げる。そのまま潤んだ瞳で、俺の頬にちゅっと触れるだけの口づけを落とした。

 嫌じゃない。もっと、求めていい。そう言われたような気がして、俺は彼女の唇に唇を押しつけた。

 そっと彼女をベッドに押し倒す。俺のキスに応えようと、必死に受け止めてくれる彼女がかわいくないわけがない。
 彼女の濡れる目元にもキスを落とし、彼女の服を取り去っていく。

 明かりも点けぬままのベッドルームは、月明りだけが差し込む。そこに映し出された彼女の白い素肌が、俺の欲情を煽り立てる。
 俺はこんなにも、独占欲が強かったのか。彼女の吸いつくような美しい素肌に口づけを落としながら、ふとそんなことを思う。

 琴子といると、自分の知らなかった一面をどんどん知る。こんな感情が自分の中で眠っていたなんて、驚くばかりだ。
 先ほど、ヴィラでふたりきりになったばかりの時もそう思った。

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