マッチングした相手は片想いの社長でした

第20話 帰ってきた過去

玄関の鍵が開く音がした。

その音を聞いただけで、自然と頬が緩んでしまう。

「ただいま」

聞き慣れた低い声。

私はリビングから玄関へ向かい、靴を脱いでいる春樹さんを迎えた。

「お帰りなさい」

「……ただいま、那奈」

私の顔を見るなり、春樹さんの表情が柔らかくなる。

会社では絶対に見せない顔。

社長として社員の前に立っている時の春樹さんは、冷静で、いつだって隙がない。

でも家に帰ってくると違う。

ネクタイを少し緩め、疲れたように息を吐きながら私のところまで歩いてくると、そのままぎゅっと抱きしめられた。

「春樹さん?」

「……やっと帰ってきた」

「ふふ。お疲れ様」

背中に腕を回す。

こうして同じ家で、「お帰りなさい」と言えることが、まだ少し不思議だった。
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