マッチングした相手は片想いの社長でした

第24話 帰る場所

香織の腕が、春樹の首にゆっくりと回された。

薄いスリップ越しに伝わる体温も、近くで揺れる黒髪も、春樹には覚えがあった。

ずっと昔のことなのに、身体のどこかに記憶だけが残っている。

「愛してたの」

香織の声が、静かな部屋に落ちた。

春樹は目を伏せる。

否定するつもりはなかった。

「ああ。俺も愛してた」

香織の瞳が揺れた。

「でも怖かった。結婚するのが」

「……受け止められない俺も悪かった」

あの頃の自分は若かった。

愛しているなら一緒にいるのが当然だと思っていた。

香織が迷えば苛立ち、不安を口にすれば、どうして自分を信じられないのかと思った。

「逃げるように海外に行って、ごめんなさい」

「いいよ。許す」

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