薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――

第十七話 ――真実の先に訪れる安らぎの日々――

未來と坂上先生が、それぞれ別の捜査員に連れられてレストランを出ていったあと、しばらくの間、誰も何も言わなかった。

ほんの少し前まで、正面のスクリーンには両親の事故も、会社も、奪われた財産も、未來と坂上先生が長い間隠してきたことも、すべて映し出されていた。けれど今は、もう電源が落とされている。

二人が座っていた椅子だけが、その場にぽつんと残っていた。

さっきまでそこにいた人たちが、もういない。それだけなのに、急に静かになった室内を見渡していると、遅れて現実が追いついてくる。

終わったんだ。

少なくとも、私が必死になって追いかけ続けてきた時間は。

「……座ろうか」

茂樹先生の穏やかな声で、張り詰めていた空気がほんの少し緩んだ。

皆がそれぞれ近くの椅子へ腰を下ろしていく。私も座った途端、身体中から一気に力が抜け、背もたれへ身体を預けて大きく息を吐いた。

「……疲れた」

口から出てきたのは、それだけだった。自分でも呆れるくらい、他に何も浮かばない。

未來に会う前から、ずっと緊張していたんだと思う。

ホテルへ向かう途中も、赤いポルシェが見えた時も、昔と何一つ変わらない顔で「奏」と呼ばれた時も。二階へ移動して坂上先生まで現れた時も、私はずっと平気なふりをしていただけだった。

照明が落ちて両親の写真が映し出されても、未來の口から「奏の全部が羨ましかった」と聞かされても、「全部返してよ」と叫んだ時も。

最後まで立っていた。

泣かなかった。

でも今は、もう立っていなくてもいい。頑張らなくてもいい。

そう思った途端、身体が鉛みたいに重くなった。

「お疲れさまでした」

隣から聞こえた陸斗さんの声に、ゆっくり顔を向ける。

「陸斗さんもでしょう」

「私はそれほど」

「嘘ですよね」

「そう見えますか?」

「見えます」

少しだけ眉を上げる陸斗さんを見て、私は小さく笑った。

こんな、何でもない会話が出来る。

それだけで、ようやく自分がいつもの世界へ戻ってきたような気がした。

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