薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
その時だった。

レストランの入口側から、複数の足音が近づいてくる。

「神宮寺さん!」

最初に飛び込んできたのは愛梨さんだった。そのすぐ後ろから純さん、そして聖子さんも続いて入ってくる。

「大丈夫だった!?」

「怪我してない?」

「奏ちゃん!」

一気に来た。

つい数秒前まで静まり返っていたレストランが、あっという間にいつもの騒がしさを取り戻す。

「ちょ、ちょっと待ってください! 順番に!」

思わず両手を上げた。

それでも純さんは真っ先に私の顔を覗き込み、愛梨さんも心配そうに腕や肩へ視線を走らせている。

「本当に大丈夫?」

「大丈夫です」

「どこも痛くない?」

「ないですって」

「本当に?」

「本当です!」

そう答えたところで、今度は聖子さんが何も言わず私の前へ来た。そのまま、ぎゅっと抱きしめられる。

「……聖子さん?」

「もう。本当に、よく頑張ったわね」

たった一言だった。

なのに、胸の奥が急に熱くなる。

未來に何を言われても泣かなかった。両親の写真を見ても、真実を全部突きつけられても、最後まで泣かなかったのに。

「……やめてください」

「何が?」

「今それ言われたら、泣きそうです」

「泣けばいいじゃない」

「嫌です」

「何でよ」

「もう終わったのに、ここで泣くの悔しいです」

そう言うと、聖子さんが少し笑った。

「奏ちゃんらしいわね」

「どういう意味ですか」

「そのままの意味よ」

聖子さんの腕が離れる。

その向こうでは、純さんも愛梨さんも、ようやく安心したような顔をしていた。

二人とも、ずっと待っていてくれた。私が未來と向き合っている間も、それぞれの場所で出来ることをしながら。

自分たちには直接関係のない私の過去にまで踏み込んで、何も知らなかった私のために。

そう考えた瞬間、ようやく胸の奥へ「終わった」という言葉が静かに落ちてきた。

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