薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
私は未來を見つめた。

「私から奪ったもの」

声が震えた。

「返してよ」

未來が顔を上げる。

「両親は返せない。分かってる。時間も戻らない。私が一人で過ごした時間も、何も知らずに苦しんだ時間も戻らない」

そこまで言ったら、胸の奥に押し込めていたものが一気に込み上がってきた。

「でも、だからって何も返さなくていいことにはならないでしょう!」

会社も。

お金も。

両親が残してくれたものも。

「返してよ!」

声がレストランに響いた。

「全部、私に返しなさいよ!」

誰も止めなかった。

陸斗さんも。

茂樹先生も。

鈴子さんも。

ただ、私と未來を見ていた。

そして。

未來の顔から、今まで貼り付いていたものがようやく全部剥がれ落ちていた。



その時だった。

レストランの入口側から、落ち着いた足音が近づいてくる。

今度は、明らかにこの場を引き取るために来た人たち。

数人の捜査関係者が、こちらへ歩いてきた。

そのうちの一人が、陸斗さんたちへ軽く一礼する。

「ここからはこちらで対応します」

その一言で、空気がまた変わった。

陸斗さんも。

茂樹先生も。

鈴子さんも。

誰も異論を挟まない。

ここまでが、それぞれに出来る範囲だった。

集めた資料を正式に渡し。

本人たちの発言も含めて確認され。

ここから先は、正式な捜査の領域になる。

「坂梨未來さん」

名前を呼ばれ、未來が顔を上げる。

「それから、坂上幹司さん」

今度は坂上先生。

「これから、それぞれ確認させていただきたいことがあります」

「別々に?」

未來の顔が強張った。

「はい」

短い返事。

でも、意味は誰にでも分かった。

ここまで一緒に誰かを利用し。

誰かを切り捨て。

自分たちだけは逃げ切れると思ってきた二人。

でも。

これからは一緒ではない。

どちらが何を話すのか。

相手について、どこまで話すのか。

もう、お互いには分からない。

坂上先生が未來を見る。

未來も坂上先生を見る。

そこに、さっきまであったはずの繋がりはもうなかった。

陸斗さんが、私の隣で静かに言った。

「ここから先は、正式な手続きに任せましょう」

私は小さく頷いた。

長かった。

本当に。

長かった。

未來と坂上先生が、それぞれ別の方向へ案内されていく。

私はその背中を見ていた。

追いかける必要はない。

もう。

私が追う役目ではないから。

そして、ようやく。

私の中で何かが、少しだけ終わった気がした。
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