さようなら、お別れしましょう
52 不敗の王 ※ジグルズ
――たった一度でも負けたら死ぬ。
それが、ドーヴハルク王となる王子の宿命だ。
王の力を継承した俺は、王の力を残すドーヴハルク王に興味があった。
なぜなら、ドーヴハルク王国は王の力を残す数少ない国だからだ。
王の力について、王がどう考えているのか知りたい。
ドーヴハルク王国の王都に来たからといって、会える保証はなかった。
俺が身分を隠し、旅をしているという理由だけでなく、国と国の関係が最悪だからだ。
たびたび、国境線で小競り合いを繰り返していることもあり、この国では、気軽に『グランツエルデ王国第一王子』だと身分を明かせなかった。
元々、グランツエルデ王国領だったドーヴハルク王国。
そのせいか、この国の王都には、グランツエルデ王国に似せた華やかな建築物が多い。
中央の広場にある噴水の彫刻もそうだ。
グランツエルデ王国の彫刻家を呼び寄せて制作させたものらしい。
ただ、題材が精霊などではなく、勇ましい戦士と馬というところが、ドーヴハルク王国ならではだ。
――ドーヴハルク王の王の力は【契約】だったな。
娘の命を犠牲にし、【契約】を使って同盟することで知られている。
どの国であっても同盟を結ぶ際は、例外なく王女を正妃として嫁がせ、必ず姻戚関係を結ぶ。
そうして、他国との王家の繋がりを強くしている。
しかし、使えば使うほど【契約】に慣れ、やがて【契約】のない相手を信用できなくなるだろう。
【契約】に頼るということは、人を信じられないと言っているのと同じだからだ。
――だが、俺の父上も変わらない。
王の力に頼りすぎ、俺に勝てると思い込んでいた。
だが、負けた。
いくら先を見れるといっても、鍛練してない体では意味がない。
グランツエルデ王が怠惰な王なら、ドーヴハルク王は疑心の王。
王の力はいずれ破綻するようになっている。
「王の力を与えた神が、そう仕向けたのだろう」
いずれ王の力が消えるようにと――夕暮れの日差しが、広場の中央の噴水を赤く染め、その水面に自分の姿が映る。
「さてと……。今日の宿を決めるか」
グランツエルデ王国に比べ、田舎で宿屋も少ないため、早く決めなくては、宿に入れなくなる。
さすがにこの寒い土地で野宿はしたくない。