雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
5-3
◇ ◇ ◇
ちょうどその頃、エノレアはどこか落ち着かない気持ちで仕事をしていた。
(今頃、殿下とリリアナ様はお茶会の最中かな?)
なぜか時計が気になってしまい、書類に集中できない。
「エノレア。どうかした? さっきから落ち着かなさそうだけど?」
エノレアの変化を敏感に感じ取ったオリバーが心配そうにこちらを見る。
「ううん、なんでもないの。……なんか集中力が切れちゃったから、少しそこら辺を歩いてこようかな」
「わかった。気分転換してきなよ」
「うん、ありがとう」
エノレアが頷いたちょうどそのとき、外から「きゃあ!」という甲高い悲鳴が聞こえた。
「誰か! 誰かー!」
ただ事ではない様子に、執務室にいた面々はハッとする。
「何かあったのかしら?」
「行ってみよう」
オリバーも立ち上がる。
エノレアはオリバーと共に、声がしたほうに走った。
階段の下が騒がしく、ふたりは階下に降りる。休憩室の前で、青くなった使用人が立ち尽くしていた。
「何があったの?」
「彼女が急に苦しみだして」
立ち尽くしていた使用人は、泣きそうになりながら部屋の中を指さす。そこには、床に倒れて苦しんでいる女の使用人がいた。
エノレアはびっくりして彼女に駆け寄る。
「ちょっと、大丈夫⁉」