雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 茶葉に全く興味のないレニオスは、特に感動することもなく不愛想に頷く。

「私が淹れさせていただきますね」

 リリアナはそう言うと、自らティーセットに手を伸ばした。
 瓶に入っている茶葉をティーポットに入れると、慣れた手つきで茶葉を蒸らし、カップへ琥珀色の紅茶を注いでいく。

「香りがとてもよくて、渋みがなく味もいいんです。是非召し上がってください」

 差し出されたカップからは、確かに芳醇で思わず口を付けたくなるような香りが漂っていた。
 口を付けないのも失礼かと思ったレニオスは、カップに手を伸ばす。

 そのとき、ざっと強い風が吹いた。
 ガゼボのそばにある木々が揺れ、咲いていた白い花の花びらが風で舞う。

「あっ」

 ひらひらと舞い落ちた花弁は、レニオスのカップに入った。

「まあ、なんてこと! すぐにお取り替えします。そこのあなた」

 リリアナは近くにいた使用人を呼ぶ。

「新しいティーカップをお持ちして。あと、ティーポットも別のものを用意して、お湯も沸かしなおして。抽出時間と温度が大事なのよ。急いで!」
「は、はい」

 使用人は頷くと、レニオスのティーカップを手に取る。

「ああ、もう! 貴重な時間なのになんてことなの」

 リリアナは眉を顰め、おかんむりの様子だ。

(騒がしい女だな)

 この程度の騒がしさなら一般的なレベルなのかもしれない。しかし、青嵐宮の使用人はレニオスの前で一切余計な口を利かないので、ひどく騒がしく感じた。

 レニオスは彼女の後方にある噴水に目を向ける。
 
(三十分か。長いな)

 早くこの時間が過ぎ去らないかと思った。
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