雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
6.伝説の諜報員、再び

6-1


 王都から乗り合い馬車を乗り継いで揺られること数日。
 賑やかな街並みが遠ざかり、景色は次第に穏やかな田園へ変わっていく。その田園を過ぎると、今度はうっそうと木々が茂る森の街道へと入っていった。

(この感じ、懐かしい)

 窓の外から香るのは、木々の匂いだ。
 どこからか鳥の囀りが聞こえる。

 懐かしい故郷の温もりを感じ、エノレアは外を眺める。
 やがて、土の広場に木を切った椅子が置かれただけの質素な馬車乗り場で、馬車は停まる。

「着きましたよ。終点です」

 御者の声がする。
 扉を開けると、見慣れた小さな村の街並みがあった。
 エノレアが通っていた村立学校のある村だ。

 ガレスの住む家には、ここからさらに一時間くらい、歩く必要がある。
 エノレアは、歩きなれた懐かしい山道をひとり進む。途中でリスと鹿は見かけたが、幸いにして熊には会わなかった。

「見えてきた!」

 坂の上に見覚えのある、ログハウスが見えた。
 調理中なのか、煙突からは白い煙が上がっている。

(突然帰ってきて、お父さん驚くだろうな)

 会ったら、なんて言おうかと考える。
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