恋のメンテナンスは必要ですか?
第八話 「また来ます」
小部屋を出て受付からカルテを受け取る。
ふーっと静かに息を吐き終えると切り替えて待合室で声をかけた。
「神崎翔さん」
「はい」
翔は椅子から立ち上がり彩に近づいた。
「担当する葉山です。よろしくお願いします。」
「お願いします」
「……こちらにどうぞ」
院内の廊下を進み診察室に案内する。
診察室は一つ一つが部屋になっていて透明の扉が廊下と部屋を区切っている。
カウンセリングルームと書かれた部屋の前につくと「こちらにお願いします」と翔を席に誘導。
同時に部屋の扉を閉めた。
「……なぜ私の職場をご存知で?」
「彩さんのお父さんに聞いたら教えてくださいました。」
(お父さん……!!)
心の中で父に念を送りながらも翔の向かいの席に座った。
「昨日は大丈夫だった?だいぶ酔っていたけど」
「うっ……色々とすみませんでした……」
「ははっ、とても気持ちよさそうに眠って可愛かったよ」
「やめてください……」
プライベートな会話もそこそこに、彩は仕事へ戻りレントゲン撮影や当院の方針など、
細かい内容を翔に説明していく。
説明を終えると撮影のためにレントゲン室へ移動した。
「じゃあ荷物はそこのカゴに入れてもらって、何か金属類つけてますか?」
「大丈夫です」
「ありがとうございます。じゃあ白いマークのとこに立ってください。……高さ調整しますね」
まるで巨大な洗濯バサミのような機械の真ん中に翔が立つと、彩は調整のために翔の顔の前に立った。目印の赤いレーザー線を翔の顔の真ん中に合わせなければならない……のに。
「……あの、そんな見つめられると、恥ずかしいです」
「ん?」
「……いえ」
気のせいだろうか。
翔の自分を見つめる視線に何か意味を感じてしまって。
落ち着かない。
調整を終え、撮影も終えると今度は診察室に移動した。
【1】と数字を振られた部屋に入り、扉を閉める。
「次は口の中を確認していきますね、椅子に座ってもらったらエプロンを……どうしました?」
いつも通り案内をしていると翔が椅子の前でたちつくしていた。
不思議な様子に声をかけると気まずそうに彼は話しだす。
「自分で予約して来たんですが、今更、彩さんに口の中を見られることが恥ずかしく感じてきて……」
翔の可愛らしい吐露に思わず笑みが溢れた。
「本当、今更ですね」
「ええ、本当に……」
その姿にキュンっと胸が高鳴る。
完璧に見える彼が恥ずかしそうに首の後ろをさする姿は意外性が強くて。
好感を抱かずにはいられなかった。