恋のメンテナンスは必要ですか?
第二十二話 「近くない?」
患者用の椅子に座ってスマホをいじっていたら気づけば休憩終了まであと二十分を切っていた。
「やば!」
彩は焦って椅子から立ち上がり、背もたれを元に戻す。
食べ忘れていた昼食を残り時間で食べ終わらなければと診察室を飛び出すと、しまっていたはずの隣の診察室の扉が開いていた。
不思議に思って中を覗く。
中の椅子に人影が見えた。
(誰か他にも寝てる人がいるのかな)
もしいるなら起こしてあげようと思って近づく。
中途半端に倒れた椅子に座っていたのは——樹だった。
「樹、休憩あと二十分だよ」
「……そうだな」
「?」
午前中とは違う、樹の落ち込んだ様子に首を捻る。
「なんかあった?」
「…………」
「……?私ご飯食べてないから戻るね」
疑問に感じながらも後で聞けばいいかと戻ろうとした。
振り始めた腕をギュッと急に握られ、足を止める。
握られた腕の先を見つめると樹がこちらに目を向きながら彩の腕を掴んでいた。
「どうしたの?」
「お前、今……」
樹は何か言いかける。
でもその先に続きはなくて。
「やっぱ、あとでいいわ」と樹は言葉を切った。
「?……わかった。」
見慣れない友人の態度に、彩は困惑を隠しきれなかった。