恋のメンテナンスは必要ですか?
 *

 彩が「下で寝てくる」と去った後のスタッフルーム。

 数人のスタッフが憩い、話すテーブルがあるのとは別の部屋。
 小さなテーブルで面談のように樹、杏菜、三樹の三人がテーブルで顔を合わせながら昼食をとっていた。

「三上さん、彩ちゃんと何かあったの?」
「……別に……ただ気に食わないだけです」
「もう子供でも学生でもないんだから、そうやって態度に出して仕事に支障きたすのはやめなさい。」
「っ……三樹さんには関係ないですよね」

「リーダーの私から見てもこの数日、仕事としての動きに支障が出てるんだから十分関係あるわ。」

 三樹の言葉に杏菜は何も返せない。
 彼女はただ不服そうに口をつぐむ。


 三樹は小さく息を吐き、弁当箱を片付け始めた。

「話したかったのはそれだけ。午後には改善されていることを願ってる」

 彼女は淡々と言葉を並べ、部屋を出ていった。
 三樹に呼び出され来たものの、自分にはなんの話もされなかった樹は先輩の意図を思案する。

(……三者面談にすることで、いじめだと喚かれないようにしたのか)

 三樹の有能さには勝てないと樹は心の中で改めて尊敬した。

「…………」
「なんで彩にいつもつっかかるんだよお前は」

 こうして話し合う機会もそんなにないだろう。
 樹は杏菜へ呆れ気味に聞いた。

 不服そうに顔を歪める彼女から乾いたような笑いが聞こえ、樹は杏菜を睨む。

「だって、杏菜ほうが可愛いし魅力もあるのに……彩先輩ばっかり。気に入らないからですよ」
 
 あまりに無茶苦茶な理由に樹は呆れるしかない。
「お前……」
 
「樹先輩、知ってます?」
 
 杏菜は意味深に笑う。
 
「彩先輩。毎朝、神崎さんにここまで送ってもらってるんですよ?」

「は……?」
 樹の瞳が揺れる。
 思い通りの反応に杏菜は嬉しそうだった。

「やっぱり知らなかったんですね」

「……神崎って新規の」
「はい。彩先輩が休む日の前に来てた男の新患さんです」
「…………」

「なんで彩先輩指名なのかと思ったら彼氏だったんですね〜」
 

 樹は動揺して脈がドクドクと早く乱れた。
 
 今すぐにでも事実を確認したくなって椅子を勢いよく引く。
 心は今すぐにでも彩の元へ向かいたい。
 なのに、理性がそれを邪魔する。

(俺は……)


 杏菜の思惑通り乱されている。
 そんなことはわかっている。
 もしかしたら俺と彩の仲を掻き乱すための嘘かもしれない。

 樹は杏菜を置いて部屋を出る。


 向かった先は彩のいる診察室ではなかった。
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