恋のメンテナンスは必要ですか?
 *


「今日もみんなお疲れ様ね。あ、三上さんだけちょっと残ってもらってもいいかな。書類の話があって」
 「はーい」

 診察が終わり、就業ミーティングも終えるとスタッフは帰宅のためにスタッフルームへ向かう。
 院長の言葉で杏菜だけは院長室へと向かったが、彩と樹は二人で目を合わせ同じタイミングでスタッフルームへと歩き出した。

「お疲れ」
「おう……飯、何食う?」
「んー……話するなら個室があるといいよね」
「あー確かにな」

 頭の中、今日考えていた店のリストを引っ張り出して個室ありと調べる。
 脳内検索に引っかかったのは半個室ではあるが、カーテンがかかっており、フラットマットでリラックスすることもできるオムライス店だった。

「あそこは?前行こうとしていくのやめたオムライスの店。確か半個室で話しやすそうだった」
「いいな」

 彩の提案で店は決まり、各々着替え終えると駐車場へと向かう。
 すれ違う同僚たちにも挨拶を告げ、樹の車に乗ろうとした時だった。


 〜♫

 彩のスマホが着信音を鳴らす。


「ごめん、電話だけ出ていい?」
「おう」

 樹の車から少し離れて電話に出ると聞こえてきた声は毎日を一緒に過ごす同居人。

「翔さん、どうしました?」
『彩、お疲れ様。今日仕事早く終わったからよかったら迎えに行こうと思って』
「あ……」

 言われて気づいた。

「すみません。今日は同僚と食事する約束をしてしまっていて……いうの忘れてすいません」
「そうなんだね。全然大丈夫。じゃあ俺は先に家へ帰って待ってるよ」
「待っ……はい、また帰る時に連絡しますね」
「うん。じゃあ後で」

 通話を切る。

 待(・)っ(・)て(・)る(・)。

 何気ない言葉なのに何日経ってもなんだか慣れない。
 胸のざわめきに頬がわずかに赤く染まる。


 彩の赤く染まる横顔を、車の横に立ちながら。

 樹は憂いを帯びた瞳で見つめていた。
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