恋のメンテナンスは必要ですか?
第三十話 「好き」
帰宅してリビングのソファーに寝転がる。
まだ翔の帰宅していないリビングは広く、折角の眺望もなんだか寂しく感じた。
だけど今は……樹とのやりとりが彩の頭を占領する。
「…………。」
静かな空間に一人。
じっとしていると悲しみを隠そうとする樹の姿を思い出してしまう。
大学から今までずっと支えてくれた同僚・親友。
振ったことで変わってしまう部分もでてくるんだろうか。
そう考えたら自分勝手な思いが彩の胸を締め付けた。
「はぁ……」
それだけじゃない。
これからどうしたらいいのか。
自分の気持ちに気づいたのはいいものの、これからどうしたらいいかわからない。
一人唸っているとリビングの扉がガチャっと音を立てて開く。
スーツ姿で顔を赤く染めながら帰ってきた翔に、彩は驚いて駆け寄った。
「お帰りなさい。翔さん、顔が赤くないですか?」
「ただいま。あぁ、実は歩いて帰ってきてみたんだ。」
「えっ?!」
普段、翔は車で通勤している。
歩いて帰ってきたのは初めてだった。
珍しい出来事に驚いて聞き返す。
「車、何かあったんですか?」
「いや、何もないよ。店で試飲しなくてはいけなくて、そのままスタッフたちと少し呑むことになったんだ。帰りはせっかくだし歩いて帰ってみようと思っただけだよ。思ったより呑んでしまったし、……彩の言葉も思い出してね」
「私の言葉?」
翔がなんのことを言っているのか、わからず記憶を辿る。
彩の答えが出る前に翔はふふっと笑いながら教えてくれた。
「出会ったとき、『この寒さがいい』と教えてくれただろう?」
「あっ」
パーティーから居酒屋に向かう途中。
翔と話した会話での一言。
それを思い出してこの人は——。