恋のメンテナンスは必要ですか?
「覚えてたんですね」
「全部覚えてるよ。言葉も……彩の表情も」
翔の言葉になんだか恥ずかしくなってまつ毛を下におろす。
愛おしそうに翔は彩を見つめていた。
「なんだか久しぶりに彩の顔を見た気がするよ。今日はクリスマスだけど、彩は一人でいたの?」
「あ……」
彩の顔が曇る。
なんて返そうか困っている彼女の表情に翔は思考を巡らせた。
「……もしかして誰かと?」
「同僚と……遊んできました」
『樹』の存在に翔の胸が締まる。湧き上がってくる焦燥感。
いつもならショックを受けながらも何も言わず耐えられたかもしれないのに。
翔はアルコールに理性を揺らされ、聞いてしまった。
「それは、告白してきた同僚?」
翔の低く沈むような声に彩の瞳は揺れてしまう。
「っ……」
彩は否定しない。沈黙は肯定と一緒だった。
翔は衝動に駆られたように持っていたコートを落とし、彩を抱き上げてソファーへと連れていく。
戸惑い、焦る彩に気づかないフリをして、彼女を広く大きいソファーに優しく寝かし、上から覆い被さった。
「しょ、しょうさ……」
「彩は俺のことどう思ってる?」
「えっ……」
翔は彩の頭の横に手をつき、彼女の足の間に自身の片足を乗せる。
空いてる方の手でキツく絞められていたネクタイを緩めた。
たわんだシャツの隙間から彼の胸元が目に入って。
押し倒されるような体勢も相まって、無意識にその先を想像してしまう。
「俺は彩がどんな選択をしたとしても受け入れるべきだ。……分かってる。なのに、それを嫌だと受け入れられない自分がいる」
綺麗な顔を不安そうに暗くさせ、苦しむように呟く翔に余裕は一切見えない。
彩が手を伸ばそうと動かすとソファーがギシッと軋む音を立てた。
「私は——」
自分の気持ちを突き詰めれば突き詰めるほど頭の中は糸屑のように絡まって。
樹の想いを聞いて、翔の想いを聞いて。次は普通の恋がしたいと思ってたのに。
自分の気持ちを考えるたびにどうしたらいいのかわからなくなってた。
でも、樹から「彼氏になりたい」言われて気づいた。
真っ先に頭へ浮かぶのは。
離れたくないと思うのは。
胸の高鳴りを抑えきれないのは。
翔だった。