恋のメンテナンスは必要ですか?
第三十四話 「幸せ」
年内最後の出勤を終えて帰宅した。
一ヶ月近くなってきた翔の家での生活にも慣れ始め、豪華すぎて気が引けていた室内にも今ではスムーズに入れるようになった。
とはいえ、未だにリビングの眺望には慣れていない。
夜景の綺麗な一面ガラスの窓へ近づき、好奇心から下を覗いてみる。
あまりの高さに体の中から何かがヒュッと引くような感覚。
「高……」
「彩?」
「わぁぁあぁ?!」
急に声をかけられて飛び跳ねた。
ガラス張りにもたれかかってしまい同時に怖さにも襲われる。
焦って離れると気配なく声をかけてきた翔の体に当たった。
「ごめん、そんなに驚くと思ってなくて」
「き、肝が冷えました……」
顔を青くした彩を優しく包み込み、撫でる翔。優しい瞳で「本当にごめん」と謝り、流れるように彩へ自身の唇を重ねる。
あまりの甘さに蕩けてしまいそうだった。
「翔さ……」
初めて交ざり合った日のような深い口付けに胸が高鳴り、頬を赤く染める。
溶けるような彩の表情に刺激され、翔はハッと欲望を抑えるように口付けを止めた。
「……おかえり。仕事お疲れ様。夜ご飯にしようか」
「……はい」
二人はもどかしさを抱えながらも、互いの温もりを手放す。
あんなに不安に思っていた関係性も。
聞くのは後でもいいかと思った。