私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】

仕事と決意

 メッセージの返信がすぐに来なくても、気にしない。
 声が聞きたいと思っても、電話は我慢して別のことに意識を向ける。
 社内ですれ違っても、会釈だけして背中を視線で追わない。
 雅芳が女性社員と話していても、目の前の作業に集中する。
 業務に没頭していれば、余計なことに感情を乱されないし、成果も上がって気持ちがいい。
 だから佳穂は意欲的に仕事に取り組み、のめり込んでいった。



「最近、やけに張り切ってるんだな」

 雅芳と二人で取引先から帰社する道すがら、そんなふうに言われた佳穂は笑顔で応じる。

「少し、心境の変化があって」
「心境の変化?」
「はい」

 問うような眼差しを向けられ、佳穂は少しはにかむように視線をアスファルトに逃がした。

「一応、課長とお付き合いさせていただいている身なので……もし会社の人に関係がバレても、不釣り合いだとか贔屓されてるとか言われないように、もっと頑張ろうって思ったんです」

 それは、雅芳に聞かれたときのために用意していた後付けの理由だった。けれど、実際そういう利点もあると佳穂自身が心から思っていた。
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