私ばかりが本気だと思って別れを告げたら、完璧上司の余裕が崩れました【ヒロイン視点改稿版】
 そう思おうとしても、彼の気持ちを確かめたくて仕掛けた結果がこれなのだから、慰めになる要素など皆無だ。
 それどころか、今まで嬉しく感じていた雅芳の配慮に満ちた行動さえ印象が変わっていく。

 ――そうだよ、だって課長は、優しくて、察しが良くて……手慣れている人だもの。

 そもそも始まりからして駆け引きじみていた。
 些細な言動から想いを見抜かれて、自分だけ好意を白状させられた。
 交際を始めてからの雅芳は紳士だったけれど、恋人を気遣い、丁重に扱うのはきっと彼にとって当然のことで、別に佳穂が特別だったからではないのだろう。

 所詮、〝好ましい〟程度の気持ちで選ばれた恋人だ。

 気持ちの落差は最初から分かっていた。ただ、佳穂が多くを望みすぎてしまっただけ。
 好きな人の恋人になれた、それだけで満足しておくべきだったのだ。

「そうだよ。求めすぎなければ、穏やかな気持でいられる。そうすればいいんだ……」

 膝の上に置いた手を、半ば無意識にぎゅうと握りしめる。
 この日から佳穂は、自分の心持ちを変えるように意識しはじめた。
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