目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
episode18ーー鮮やかなチェスのように
その日の夕刻、副社長室。
鷹司は机上の端末に表示された「取締役会資料:最終承認リクエスト」の通知を開いた。
鷹司は画面に並ぶログの数字を一目見るなり、微かに目を細めた。
承認ルートのタイムスタンプ、そして修正履歴に添えられた市川真由の簡潔な注記。
『高条室長より口頭にてデータ差替のご指示をいただきましたが、規定に基づき、昨日副社長より承認済みの確定版(Ver.3ー2)を最終稿としてシステム申請いたします。』
鷹司は背もたれに深く身体を預け、整った唇の端をわずかに上げた。
(……なるほど。仕掛けてきたか)
鷹司は高条香織という女性の有能さを、誰よりも知っている。
高条がデータの旧バージョンと新バージョンを取り違えるなどというケアレスミスを犯すはずがない。
高条は市川真由という社員の「処理能力」と「自分(鷹司)との個人的なパイプの有無」を揺さぶり、炙り出そうとしたのだ。
鷹司は机上の端末に表示された「取締役会資料:最終承認リクエスト」の通知を開いた。
鷹司は画面に並ぶログの数字を一目見るなり、微かに目を細めた。
承認ルートのタイムスタンプ、そして修正履歴に添えられた市川真由の簡潔な注記。
『高条室長より口頭にてデータ差替のご指示をいただきましたが、規定に基づき、昨日副社長より承認済みの確定版(Ver.3ー2)を最終稿としてシステム申請いたします。』
鷹司は背もたれに深く身体を預け、整った唇の端をわずかに上げた。
(……なるほど。仕掛けてきたか)
鷹司は高条香織という女性の有能さを、誰よりも知っている。
高条がデータの旧バージョンと新バージョンを取り違えるなどというケアレスミスを犯すはずがない。
高条は市川真由という社員の「処理能力」と「自分(鷹司)との個人的なパイプの有無」を揺さぶり、炙り出そうとしたのだ。