目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
真由は揺らぎない視線で、真っ直ぐに高条を見返した。

私情を一切挟まず、あくまで「会社のルール」を盾にした完璧な回答。

​高条の眉が、ほんの数ミリだけ動く。

​「……そう。相変わらず隙がないのね、市川さんは。結構よ、システム経由で通して頂戴」

​高条はそれだけ言うと、隙のない足取りで秘書課へと戻っていった。

​デスクに残された真由は、そっと手元で端末を開き、システムログを保存した。

高条の真意がどこにあるにせよ、これは単なる伝達ミスではない。

自分たちの「演じている仮面」の僅かな綻びを、あの鋭敏な秘書室長は見逃さなかったのだ。

​不意に、胸の奥で静かな警告音が鳴り響く。

​完璧に演じ切っているはずの2人の関係に、忍び寄る影。

真由はキーボードに指を置き、冷静に、かつ正確に「次の1手」の防衛策を打ち込み始めた。
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